臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
臨床用MRIは強磁場とRFパルスにより主に水素原子(1H:プロトン)の核磁気共鳴信号を検出して画像化する。水分(プロトン)を多く含む軟部組織では信号が得やすくコントラストに優れる。一方、水分の少ない骨皮質や含気部位はプロトン密度が低く信号が弱いため撮影に適さない。撮像法にはT1強調・T2強調・プロトン密度強調などがあり、血流を利用したMRアンギオグラフィ(MRA)により造影剤非使用でも血管描出が可能で、必要に応じてガドリニウム造影MRAも行われる。炭素原子の分布画像は臨床標準のMRIの対象ではない。
選択肢別解説
正しい。軟部組織は水分(プロトン)含有が高く、MRI信号が得られやすくコントラストも良好である。脳・肝臓・筋などの描出に適する。
誤り。臨床用MRIは主として水素原子(1H)の核磁気共鳴を用いる。炭素(13C)を直接画像化する手法は研究的には存在するが臨床標準ではない。
誤り。水分の少ない組織(骨皮質、肺の含気部など)はプロトン密度が低く信号が弱いため、撮影に適していない。
正しい。MRIの基本的な撮像コントラストにT1強調像があり、解剖学的描出や脂肪の高信号などの特徴をもつ。
正しい。MRアンギオグラフィ(MRA)により血管描出が可能で、TOF法や位相コントラスト法などの非造影MRAに加え、ガドリニウム造影MRAも用いられる。
解説
MRIは主として水や脂肪中に存在する水素原子核(プロトン)の核磁気共鳴を利用して画像化する。ラーモア周波数は静磁場強度に比例($\omega_0=\gamma B_0$)し、組織コントラストには縦緩和(T1)と横緩和(T2)が関与する。静磁場は超電導磁石・常電導(抵抗)磁石・永久磁石などで発生でき、永久磁石は低〜中磁場の装置で広く用いられる。画質(特にSN比)は一般に高磁場ほど有利であり、「弱いほど画質向上」は誤りである。
選択肢別解説
誤り。MRIで得られるのは水や脂肪に含まれる水素原子核(プロトン)密度や緩和特性に基づく信号であり、酸塩基平衡でいう「水素イオン(H+)」の分布や濃度そのものを画像化するわけではない。従って表現として不正確。
誤り。ラーモア周波数は静磁場強度に比例する。式は $\omega_0=\gamma B_0$($\gamma$:核種のジャイロ磁気比)であり、反比例ではない。
正しい。緩和には縦緩和(T1)と横緩和(T2)がある。T1は縦磁化の回復、T2は横磁化の位相緩和を表し、組織特性の差がコントラスト形成に寄与する。
正しい。静磁場の発生には永久磁石も用いられる(主に低〜中磁場の装置)。他に常電導磁石や超電導磁石も実用化されている。
誤り。画像のSN比は一般に静磁場強度に概ね比例して向上し、高磁場ほど高画質化に有利である(ただしアーチファクトやSAR等の課題は別途ある)。
解説
MRI装置は、(1)強い静磁場を発生させスピンを整列させる静磁場発生磁石(B0)、(2)空間的に磁場をわずかに変化させ位置情報を与える傾斜磁場コイル、(3)Larmor周波数のRFパルスで励起しNMR信号を受信するRF送受信コイル、を中核構成とする。これらは画像形成に不可欠の要素である。一方、コリメータはX線やγ線の進行方向を制限するためX線装置・CT・核医学機器で用いられる部材であり、MRIでは不要である。サイクロトロンは荷電粒子を加速する装置で、PET用核種の製造や粒子線治療に用いられるがMRIの構成要素ではない。したがって、RF送受信コイル、傾斜磁場コイル、静磁場発生磁石が正しい。
選択肢別解説
誤り。コリメータはX線やγ線の束を制限・整形するための部材で、X線撮影装置、CT、γカメラ(SPECT)などで用いられる。MRIは電離放射線を用いないためコリメータは不要で、装置の構成要素ではない。
正しい。RF送受信コイルはLarmor周波数のRF磁場(B1)を印加して体内の核スピンを励起し、発生するNMR信号を受信する。画像信号の励起・検出に不可欠なMRIの基本構成要素である。
正しい。傾斜磁場コイルは主磁場に対してx・y・z方向の線形勾配を重畳し、周波数エンコードや位相エンコードにより位置情報を付与する。画像化に必須のMRI構成要素である。
正しい。静磁場発生磁石は強い均一な静磁場(B0)を発生し、核スピンの整列と共鳴条件を規定する。現在は超電導磁石が主流で、MRIの中核構成要素である。
誤り。サイクロトロンは荷電粒子加速器で、PET用放射性核種の製造や粒子線治療に用いられる。MRIの構成要素ではない。
解説
生体は総じて弱い反磁性体であり、比透磁率は真空とほぼ同じで $\mu_r \approx 1$ である。脳磁図(MEG)は神経細胞の電流活動が作る極めて微弱な磁界を計測する手法で、ヘモグロビンの磁性変化を計測するものではない(ヘモグロビンの磁化率変化に基づく信号はfMRIのBOLD効果)。心筋活動が作る磁界(心磁図:数10 pT程度、$10^{-11}\,\mathrm{T}$ オーダー)は都市環境における磁気雑音($10^{-7}\text{--}10^{-6}\,\mathrm{T}$ 程度)よりはるかに小さい。MRIは強い静磁場下で生体内の水素原子核(プロトン)をラジオ波(RF)で核磁気共鳴させる原理(ラーマー周波数 $\omega_0=\gamma B_0$)を利用する。また、時間的に変化する磁界(交流磁界)はファラデーの電磁誘導により生体内に起電力を生じ、導電性組織内に渦電流を流す。以上より、正しいのは4と5である。
選択肢別解説
誤り。生体(多くは水分主体)は弱い反磁性体で、比透磁率は真空とほぼ同じ $\mu_r \approx 1$ である。「約10」は過大で、生体の磁化応答の実態と合致しない。
誤り。脳磁図(MEG)は神経細胞群の電流活動に伴って頭外に現れる微弱磁界をSQUID等で計測する。ヘモグロビンの磁性(デオキシヘモグロビンの常磁性)変化を主に反映するのはfMRIのBOLD効果であり、MEGの計測対象ではない。
誤り。心筋活動で生じる磁界は数10 pT($10^{-11}\,\mathrm{T}$)程度と極めて小さい。一方、都市環境の磁気雑音は一般に $10^{-7}\text{--}10^{-6}\,\mathrm{T}$ オーダーで、心磁界よりはるかに大きい。そのため心磁図計測には磁気シールドなどの雑音対策が必要となる。
正しい。MRIは強い静磁場下で水素原子核(プロトン)の核スピンをRFパルス(電磁波)で励起し、ラーマー周波数 $\omega_0=\gamma B_0$ における共鳴信号(緩和過程を含む)を検出して画像化する。
正しい。時間変化する磁界(交流磁界)はファラデーの電磁誘導 $\mathcal{E}=-\mathrm{d}\Phi/\mathrm{d}t$ により生体内に電界を誘起し、導電性組織内に渦電流を発生させる。TMSやMRIの高速勾配切替での誘導電流・神経刺激がその実例である。
解説
MRIは主として体内に豊富な水素原子核(1H)の核磁気共鳴信号を利用して画像化する装置であり、一般的な臨床MRIは炭素原子そのものの空間分布を直接画像化するものではない。超電導MRIはコイルを超電導状態に保つため極低温が必要で、液化ヘリウムが冷媒として用いられる。静磁場強度(B0)が高いほど核磁化が増し信号雑音比(SNR)が向上するため、原則として画質は向上する。空間位置の符号化には傾斜磁場が必須で、これにより位置依存の周波数・位相変化を与えて画像再構成が可能となる。石灰化病変は水素含有が乏しくMRI信号がほとんど得られないため、描出には適しておらず、評価にはCTが有用である。以上より、誤りは「炭素原子の空間分布を画像化する」と「石灰化病変の描出に適している」である。
選択肢別解説
誤り。臨床MRIは主に水素原子核(1H)由来の信号を用いて、プロトン密度や緩和特性(T1・T2など)の違いを画像化する。13Cなどの異核MRIは研究的・特殊用途に限られ、一般的な臨床装置が炭素原子の空間分布を画像化しているわけではない。
正しい。超電導電磁石を超電導状態(約4 K)に維持するため、液化ヘリウムが冷媒として用いられる。近年の“ドライ”システムでもヘリウムを閉サイクルで用いて冷却している。
正しい。静磁場強度が上がると核磁化が増加しSNRが向上するため、一般に画質(分解能や撮像時間の選択自由度)は向上する。高磁場ではサセプティビリティアーチファクトやSAR増加などの制約はあるが、原則として画質向上は妥当である。
正しい。傾斜磁場は位置ごとに磁場強度(ひいては共鳴周波数・位相)を変化させることで空間符号化を行うため、画像化に不可欠である。傾斜磁場がないと信号の発生位置を特定できず画像再構成ができない。
誤り。石灰化は水素含有が極めて少なくMRI信号が乏しいため描出に不向きで、評価には高コントラストで描出可能なCTが適している。特殊な撮像(UTEやSWIなど)で検出可能な場合はあるが、一般論としてMRIは適していない。
解説
画像診断各法の原理に基づく正誤判定である。X線検査は外部から照射されたX線が体内で減弱し、人体を透過してきたX線(もしくはその減弱情報)を検出器で測定して画像化するため正しい。MRIは強い静磁場を人体に与え、さらにRFパルスや傾斜磁場を用いて核磁気共鳴信号を得るため「磁場を与える」という表現で正しい。超音波検査はプローブから音波を送信し、体内で反射・散乱したエコーを受信する方式であり、体内から自発的に発生する音波を捉えるわけではないので誤り。PETは体内に投与した陽電子放出核種の対消滅で生じる一対の511 keVの$\gamma$線を外部検出するため、体外から$\gamma$線を照射するわけではなく誤り。SPECTは$\gamma$線放出核種からの$\gamma$線を検出する核医学検査であり、体内からの$\beta$線を捉えるわけではないので誤り。
選択肢別解説
正しい。単純X線撮影やX線CTは、外部から照射したX線が体内で吸収・散乱され強度が変化した(人体を透過した)X線を検出器で測定し、減弱差を画像化する。
誤り。超音波検査はプローブ(トランスデューサ)から超音波を送信し、体内で反射・散乱して戻ってくるエコーを受信・画像化する。体内から自発的に発生する音波を捉える検査ではない。
誤り。PETは陽電子放出核種を体内に投与し、陽電子と電子の対消滅で生じた一対の511 keVの$\gamma$線を同時計数で検出する。体外から$\gamma$線を照射する検査ではない。
誤り。SPECTは$\gamma$線放出核種(例: $^{99m}$Tc)から放出される$\gamma$線をコリメータ付き検出器で回転収集して断層画像化する。$\beta$線(電子)を捉える検査ではない。
正しい。MRIは強い静磁場(例: 1.5T、3T)を人体に与えて水素核の磁化を整列させ、RFパルスで励起した後の信号を検出して画像化するため、「人体に磁場を与える」という表現は適切である。
解説
MRIは強磁場中で水素原子核(プロトン)の核磁気共鳴を利用し、RF励起と傾斜磁場による位置エンコードで信号を収集して画像化する。プロトン密度やT1・T2緩和特性の差により軟部組織コントラストに優れ、血流はTOFや位相コントラスト法などで評価可能で、ボリューム撮像から3次元再構成も行える。一方で撮像時間が相対的に長く、体動・呼吸・拍動などの運動に起因するアーチファクトを受けやすいため、心臓など動きのある臓器は同期(ECGゲーティング)、呼吸停止、cine撮像等の工夫が必要で、一般論として「適している」とは言い難い。したがって誤っているのは「動きのある臓器の撮影に適している」。
選択肢別解説
正しい。MRI信号の主な起源は生体内の水分子に含まれる水素原子核(プロトン)であり、その空間分布や緩和特性の違いを画像化する(プロトン密度像、T1/T2強調像など)。
正しい。MRIはT1・T2緩和の差を強調でき、水分含有量の差が反映されるため、脳・脊髄・筋・靱帯・腫瘍など軟部組織のコントラスト分解能に優れる。
正しい。MRA(TOF、位相コントラスト)や4D Flow MRIなどにより血流の有無・方向・速度分布の測定が可能で、造影剤を用いない手法も広く用いられる。
正しい。傾斜磁場で位置をエンコードし、薄スライスのボリューム撮像や等方ボクセル収集からの3D再構成により臓器の3次元構造を画像化できる。
誤り。MRIは一般に撮像時間が長く運動アーチファクトの影響を受けやすいため、心臓など動きのある臓器の撮影には不利である。ECG同期、呼吸同期、cineや高速シーケンス等で克服可能だが、原理的に「適している」とは言えない。
解説
MRIは強磁場中で主に水素原子核(プロトン)の核磁気共鳴現象を利用して画像化する。空間位置の符号化には傾斜磁場を印加し、位置ごとにラーモア周波数が変化する性質($\omega = \gamma B$)を利用してスライス選択・周波数エンコード・位相エンコードを行う。血管描出は造影剤を用いないMRA(非造影MRA;TOF法、位相コントラスト法など)でも可能である。一方、CT値(ハウンズフィールド値)で「水=0、空気=-1000」と定義するのはX線CTであり、MRIの信号強度は撮像条件に依存し絶対スケールは定義されない。また肺は空気が多くプロトン密度が低く、磁化率差による不均一・アーチファクトも大きいため、構造観察は一般にX線CTが適する。
選択肢別解説
正しい。MRAでは血流そのものを信号源として利用でき、TOF法や位相コントラスト法により造影剤なしでも血管描出が可能である(臨床では造影MRAもあるが、非造影法も確立している)。
誤り。MRIが主に画像化しているのは体内の水分子に含まれる水素原子核(プロトン)の信号であり、炭素原子の分布を直接画像化しているわけではない。
誤り。「水=0、空気=-1000」という輝度(CT値/ハウンズフィールド値)の定義はX線CTのもので、MRIの信号強度は撮像パラメータ(T1/T2強調、プロトン密度、TR/TEなど)に依存し絶対値として規格化されない。
誤り。肺は空気含有が多くプロトン密度が低いためMRI信号が弱く、空気-組織界面の磁化率差による不均一やアーチファクトも強い。構造観察にはX線CTの方が適している。
正しい。MRIの空間位置情報は傾斜磁場により位置依存で共鳴周波数(および位相)を変化させて符号化する(スライス選択、周波数エンコード、位相エンコード)。これはラーモア周波数の関係 $\omega = \gamma B$ を利用している。