臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
医療機器の生物学的安全性評価は ISO 10993-1(JIS T 0993-1)に基づき、「生体との接触部位」と「接触時間」によって機器を分類し、その分類に応じて必要な評価項目(例:細胞毒性、感作性、刺激性/皮内反応、急性・亜急性・亜慢性全身毒性、遺伝毒性、埋植試験など)を選択する。接触面積は分類基準には用いない。なお抽出試験の条件設定(表面積/抽出液量比など)では面積が関与するが、これは評価の前処理条件であり、分類軸ではない。したがって「生体と接触する面積で分類される」は誤りとなる。
選択肢別解説
正しい。感作性試験は ISO 10993-1(JIS T 0993-1)で示される生物学的評価項目の一つで、該当する接触部位・接触時間の機器に対して必要に応じて実施される(アレルギー誘発の有無を評価)。
正しい。細胞毒性試験は基本的な初期スクリーニングであり、多くの医療機器材料で求められる。抽出物または直接接触により細胞への毒性(生存率低下、増殖阻害など)を評価する。
正しい。分類は接触時間に依存し、一時的(24時間以内)、短期(24時間超〜30日以下)、長期(30日超)に区分される。時間区分により要求される評価項目が異なる。
誤り。生物学的安全性評価の分類は接触部位と接触時間で行い、接触面積は分類基準ではない。面積は抽出試験の条件設定(表面積/抽出液量比)などで考慮されるが、分類そのものには用いない。
正しい。分類は接触部位に依存し、表面接触(皮膚、粘膜、損傷皮膚など)、外部と体内を連結する機器(血液路等)、体内埋込機器などのカテゴリで評価項目が決まる。
解説
誤りは「人工腎臓には再吸収機能がある。」である。人工腎臓(血液透析器・ダイアライザ)は半透膜を介した拡散(透析)と圧力差による限外濾過(濾過)で溶質・水分を除去する装置であり、腎臓の近位〜遠位尿細管・集合管で行われる能動輸送やチャネル制御に基づく再吸収・分泌機能は備えていない。その他の選択肢は、医用材料の基礎として妥当である。生体適合性に求められる要件は使用部位(血液・組織接触の有無)、使用期間、機能要求などにより異なり、材料選定にも影響する。EOG(エチレンオキサイドガス)滅菌は低温での滅菌が可能なため、熱に弱い高分子・複合材などで用いられる。ニッケルを含む形状記憶合金など、アレルギー原因となり得る元素を含む医用材料は実在する。生体吸収性材料は体内で加水分解・生体吸収されるため、長期強度維持には不向きで、非吸収性材料と比べ耐久性は低い。
選択肢別解説
正しい。生体適合性の要求水準は用途・接触部位(血液接触、皮下、骨内など)、使用期間(短期・長期)、必要な機械的特性や表面特性によって変わるため、材料(およびその使われ方)によって求められる要件は異なる。
正しい。EOG(エチレンオキサイドガス)滅菌は低温で行えるため、高圧蒸気滅菌に耐えない熱可塑性樹脂や複合材、電子部品を含む医療機器などの滅菌に用いられる。残留ガス低減のためのエアレーション管理が必要である。
誤り。人工腎臓(ダイアライザ)は半透膜による拡散(透析)と限外濾過(濾過)で老廃物や水分を除去する受動輸送主体の装置であり、腎尿細管の能動輸送により行われる電解質・水の再吸収機能は有していない。
正しい。医用材料の中にはアレルギーの原因となり得る元素を含むものがある。例としてニッケルを含むニッケル–チタン合金(形状記憶合金)や、コバルト・クロムを含む合金などが挙げられる。使用時は生体適合性評価やアレルギーリスクの管理が重要である。
正しい。生体吸収性材料(例:ポリグリコール酸、ポリ乳酸、コラーゲンなど)は体内で分解・吸収される設計であるため、時間経過とともに機械的強度が低下し、長期耐久性は非吸収性材料に劣る。吸収性縫合糸や一時的インプラントなどの用途に適している。
解説
医療機器の安全性試験は、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)および関連する省令・通知、JIS/ISO 規格に基づき実施される。主な評価は、材料や構造の強度・耐久性などの物性試験、溶出物(抽出物)評価などの化学的試験、生体適合性(細胞毒性・感作性・刺激性など)を評価する生物学的試験(ISO 10993 シリーズ)から構成される。これらは主として製造販売業者や受託試験機関が実施し、審査当局が適合性を確認する。一方、医療機関における「医療機器安全管理責任者」は院内の機器の安全使用や管理体制の整備・教育等を担う職務であり、承認審査に用いる安全性試験を自ら実施する立場ではないため、選択肢2は誤りである。
選択肢別解説
正しい。溶出物(抽出物)試験は化学的安全性評価の基本で、規定溶媒・条件で材料から抽出される成分を化学同定・定量し、毒性学的リスク評価につなげる(ISO 10993-12/18/17 など)。医療機器の安全性試験に含まれる。
誤り。医療機関の「医療機器安全管理責任者」は院内における機器の安全管理体制の整備、使用者教育、保守点検の統括等を担う役割であり、医療機器の承認・認証に用いる安全性試験(物性・化学・生物学的試験)を自ら実施する主体ではない。これらの試験は主として製造販売業者や試験機関が実施し、薬機法等に基づき審査される。
正しい。生物学的試験はISO 10993 シリーズに基づき、細胞毒性、感作性、刺激性などを機器の接触部位・接触時間に応じて評価する。医療機器の安全性評価の中核である。
正しい。医療機器の品質・有効性・安全性に関する規制は薬機法の枠組みで行われ、試験要求事項は関連する省令・通知や JIS/ISO 規格(例:ISO 10993、JIS T 0601-1[IEC 60601-1]など)に準拠して求められる。
正しい。物性試験には、引張強さ、硬さ、疲労、耐摩耗性、形状安定性などの評価が含まれ、使用環境での機械的・物理的安全性を確認するために実施される。
解説
体内に長期留置される医用材料には、無菌で安全に導入され、体内環境で所期の働きを安定して発揮することが不可欠である。具体的には、(1)滅菌可能であること(可滅菌性:高圧蒸気・エチレンオキサイド・放射線など妥当な方法で滅菌でき、滅菌過程で劣化しにくいこと)、(2)生体に有害作用を示さないこと(非毒性:細胞毒性・感作性・発がん性・過度な炎症誘発などがないこと、血液・組織適合性を含む)、(3)目的とする医用機能を使用期間にわたり満たすこと(機能性:機械的強度・耐摩耗・耐腐食・電気的特性などの必要性能を維持)といった条件が中核である。一方、体内はおよそ37℃で火炎にさらされる状況も想定されないため、耐熱性や難燃性そのものは不可欠条件ではない(滅菌法の選択により耐熱性が低い材料でも対応可能)。したがって本問の正答は「可滅菌性」「機能性」「非毒性」である。
選択肢別解説
正しい。体内に埋め込む前に無菌化できることは必須であり、オートクレーブ、エチレンオキサイド、放射線など妥当な滅菌法に適合することが求められる。滅菌過程で著しく劣化しないことも含意される。
正しい。材料は医療上の目的(支持・置換・導電・薬物徐放など)に必要な機能を体内環境下で所定期間安定して発揮しなければならない。機械的・化学的・電気的などの要求性能を満たすことが不可欠である。
正しい。生体に対して毒性や感作性、発がん性、過度な炎症惹起などを示さないことが必須であり、血液・組織に対する適合性を含めた安全性が求められる。
誤り。体内使用は約37℃で行われるため高い耐熱性自体は不可欠ではない。高温滅菌が必要なら材料選択で対応するが、放射線やエチレンオキサイドなど耐熱性を要さない滅菌法もあるため、不可欠条件とはいえない。
誤り。体内で火炎暴露は想定されず、難燃性は埋植材料の不可欠条件ではない。難燃性の有無は体内安全性や機能発現に直結しない。