臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
非接地配線方式(医用IT系統)は、絶縁変圧器で電路を大地から電気的に切り離し、絶縁監視装置で対地絶縁状態を常時監視する方式である。主目的は、1線地絡(1本の線が大地と導通)しても遮断器が動作して電源が停止しないようにし、治療機器の電源供給を継続することにある。したがって人命に直結する医用室(手術室・集中治療室など)で求められる。非常電源(停電対策)とは目的が異なり、連動設備ではない。また、系統の対地容量や地絡電流を抑える観点から、絶縁変圧器の定格容量には上限(国内実務では7.5 kVA以下)が設けられる。
選択肢別解説
誤り。非接地配線方式の主目的は、1線地絡時でも電源供給を継続し、治療・生命維持機器の停止を防ぐことである。感電リスクの低減は副次的な効果であり、感電防止を主目的とする方式ではない。感電対策は機器側の漏れ電流基準や等電位接地などと併せて実現される。
正しい。集中治療室(ICU/CCUなど)では地絡による自動遮断で機器電源が失われると生命に直結するため、1線地絡時の供給継続を目的とする非接地配線方式(医用IT系統)の設置が求められる。
正しい。非接地配線方式では絶縁監視装置により、電路と大地間(実務上は片側導体の対地)絶縁状態を常時監視し、対地インピーダンス/絶縁抵抗が規定値を下回ると警報を発する。これにより1線地絡の早期発見と保全対応が可能となる。
誤り。非常電源は停電時の電源確保を目的とし、非接地配線方式は地絡時の供給継続と絶縁監視を目的とする。目的が異なるため連動する設備ではない(併設されることはあるが機能連携を前提としない)。
誤り。使用する絶縁変圧器の定格容量には上限があり、系統の対地容量や地絡電流を抑えるために大容量は避けられる。国内の医療施設向け実務・指針では1台あたり7.5 kVA以下が一般的であり、「制限がない」は不適切。
解説
非接地配線方式(医用IT配電システム)は、絶縁トランスの二次側を大地に対して浮かせ、絶縁監視装置で対地絶縁状態を常時監視する方式である。これにより一線地絡(1本の線が大地に故障接触)しても回路が閉じにくく、地絡電流は系統の分布容量や絶縁抵抗でごく小さく抑えられるため、過電流保護や漏電遮断器が動作せず、電源供給を継続できる。生命維持装置などの停止を避けつつ、警報で保守介入を促すことが主目的であり、患者漏れ電流の低減や停電対策そのものを目的とするものではない。
選択肢別解説
誤り。患者漏れ電流の管理は主として医用電気機器の設計(二重絶縁、保護接地、BF/CF適用部の規格適合)で達成される。非接地配線方式の主目的は患者漏れ電流の防止ではない。
誤り。非接地配線方式では絶縁監視装置で対地絶縁の低下を検知し警報するが、絶縁破壊そのものを防止するのが目的ではない。主目的は、初回の地絡( 一線地絡)時でも電源供給を継続することにある。
誤り。停電時の電源確保は非常用発電機やUPS等の非常電源設備の役割であり、非接地配線方式の目的ではない。
正しい。二次側を大地から浮かせた非接地配線方式では、一線地絡が起きても回路が閉じにくく地絡電流が小さいため保護装置は動作せず、警報のみで電源供給を継続できる。重要医用機器の連続運転を確保することが主目的である。
誤り。過電流の監視や遮断は配電系の保護装置(ヒューズ・遮断器)の一般的機能であり、非接地配線方式の主目的ではない。非接地でも過電流が発生すれば保護装置が作動する。
解説
医用室の電気安全では、保護接地と等電位接地が基本である。保護接地は機器外装などの非充電金属部が万一活線化した際に大電流を流して過電流保護器を作動させ、感電(主にマクロショック)や火災を防ぐために全ての医用室で必須とされる。等電位接地(等電位ボンディング)は、室内の金属部材・配管・機器の接地端子等を相互にボンディングして電位差を極小化し、患者環境での微小電流(ミクロショック)リスクを低減することが主目的である。医用接地センタは医用室内各所からの接地線を集約して接地幹線へ接続する端子箱であり、接地幹線と接地極の間を中継するものではない。接地幹線は建物の鉄骨や主鉄筋を利用でき、独立設置は必須ではない。鉄骨造建物では地下部分の鉄骨・基礎鉄筋等を接地極(基礎接地)として用いることが認められている。以上より、1と5が妥当であり、2〜4は記述が不適切である。
選択肢別解説
正しい。医用室では保護接地設備の設置が基本要件であり、機器外装の活線化時に過電流を確実に遮断して感電・火災を防止する。本文中の「保護設置」は用語上は「保護接地」の誤記と考えられるが、趣旨は正しい。
誤り。等電位接地(等電位ボンディング)の主目的は、医用室内の各導電部間の電位差をなくし、患者環境での微小電流経路を減らしてミクロショックを防ぐことにある。マクロショック防止の主手段は保護接地と過電流保護などである。
誤り。医用接地センタは医用室内の機器・金属部などの接地線を集約し、接地幹線へ接続するための端子箱である。接地幹線と接地極の間を中継する装置ではない。
誤り。接地幹線は建物の鉄骨や主鉄筋(複数条)を使用でき、建物構造から独立して別に設けることを必須としていない。
正しい。鉄骨造りの建物では地下部分の鉄骨・基礎鉄筋を接地極(基礎接地)として用いる方法が認められている。本文の「地価部分」は「地下部分」の誤記と考えられるが、内容は妥当である。