臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
本問は「装置から生体に物理的エネルギーを加えて計測するか」を問う。外部から超音波・X線・光などのエネルギーを生体に与え、その反射・散乱・透過などの応答を検出する方式は能動的計測に該当する。超音波診断装置は超音波パルスを送波して反射エコーを受信し、X線CT装置はX線を照射して透過線量を計測し断層再構成を行う。光トポグラフィ装置(近赤外分光法)は近赤外光を頭部表面から照射し、散乱・反射光からヘモグロビン濃度変化を推定する。これらはいずれも装置側からエネルギーを加える。一方、PETやSPECTは体内に投与した放射性医薬品から自発的に放出されるγ線を外部検出器で受動的に計測する方式であり、装置自体が生体へエネルギーを与えるわけではない。よって該当するのは1、2、5である。
選択肢別解説
正しい。超音波診断装置はトランスデューサから超音波パルス(機械的振動エネルギー)を体内に送波し、その反射(エコー)を受信・画像化する。装置が生体に物理的エネルギーを加える能動的計測である。
正しい。X線CT装置はX線管からX線(電磁放射線エネルギー)を被写体に照射し、透過したX線強度を検出して断層画像を再構成する。外部からエネルギーを与える能動的計測である。
誤り。PET装置は放射性医薬品を体内に投与し、体内で生じる陽電子消滅に伴う511 keVのγ線を外部検出器で検出する受動的計測である。装置から生体へエネルギーを照射して計測するわけではない。
誤り。SPECT装置は体内の放射性医薬品から放出されるγ線をガンマカメラで検出する受動的計測であり、装置が外部からエネルギーを生体に加えて計測する方式ではない。
正しい。光トポグラフィ装置(近赤外分光法、NIRS)は近赤外光を頭皮上から照射し、散乱・反射光を検出して酸化・還元ヘモグロビン濃度変化を推定する。装置が光エネルギーを生体に加える能動的計測に該当する。
解説
画像診断各法の原理に基づく正誤判定である。X線検査は外部から照射されたX線が体内で減弱し、人体を透過してきたX線(もしくはその減弱情報)を検出器で測定して画像化するため正しい。MRIは強い静磁場を人体に与え、さらにRFパルスや傾斜磁場を用いて核磁気共鳴信号を得るため「磁場を与える」という表現で正しい。超音波検査はプローブから音波を送信し、体内で反射・散乱したエコーを受信する方式であり、体内から自発的に発生する音波を捉えるわけではないので誤り。PETは体内に投与した陽電子放出核種の対消滅で生じる一対の511 keVの$\gamma$線を外部検出するため、体外から$\gamma$線を照射するわけではなく誤り。SPECTは$\gamma$線放出核種からの$\gamma$線を検出する核医学検査であり、体内からの$\beta$線を捉えるわけではないので誤り。
選択肢別解説
正しい。単純X線撮影やX線CTは、外部から照射したX線が体内で吸収・散乱され強度が変化した(人体を透過した)X線を検出器で測定し、減弱差を画像化する。
誤り。超音波検査はプローブ(トランスデューサ)から超音波を送信し、体内で反射・散乱して戻ってくるエコーを受信・画像化する。体内から自発的に発生する音波を捉える検査ではない。
誤り。PETは陽電子放出核種を体内に投与し、陽電子と電子の対消滅で生じた一対の511 keVの$\gamma$線を同時計数で検出する。体外から$\gamma$線を照射する検査ではない。
誤り。SPECTは$\gamma$線放出核種(例: $^{99m}$Tc)から放出される$\gamma$線をコリメータ付き検出器で回転収集して断層画像化する。$\beta$線(電子)を捉える検査ではない。
正しい。MRIは強い静磁場(例: 1.5T、3T)を人体に与えて水素核の磁化を整列させ、RFパルスで励起した後の信号を検出して画像化するため、「人体に磁場を与える」という表現は適切である。
解説
PETは陽電子放出核種を標識した放射性医薬品を投与し,陽電子が体内の電子と対消滅して生じる2本の511 keV消滅γ線を同時計数して画像化する装置である。代表的薬剤のFDGはブドウ糖類似体で,組織の糖取り込み・糖代謝活性を反映する。PETで用いる核種(例:$^{11}\mathrm{C}$約20分,$^{13}\mathrm{N}$約10分,$^{15}\mathrm{O}$約2分,$^{18}\mathrm{F}$約110分)は,SPECT核種(例:$^{99\mathrm{m}}\mathrm{Tc}$約6時間,$^{123}\mathrm{I}$約13時間など)より概して半減期が短く,多くはサイクロトロンで製造される。被曝については,PET単独の有効線量は一般に数mSv〜10 mSv弱であり,標準的なX線CTの被曝より小さいか同程度である(PET/CTではCT分が加算される)。
選択肢別解説
誤り。PETは放射性医薬品から放出された陽電子が周囲の電子と対消滅して生じる2本の511 keVのγ線(消滅放射線)を同時計数して画像化する。電子線(ベータ線)そのものを検出するわけではない。
正しい。代表的なFDG-PETでは,グルコース類似体であるFDGが細胞に取り込まれリン酸化後に代謝回路へ進みにくく細胞内に留まる性質を利用し,組織の糖取り込み・糖代謝活性を評価できる。
正しい。PET核種($^{11}\mathrm{C}$約20分,$^{13}\mathrm{N}$約10分,$^{15}\mathrm{O}$約2分,$^{18}\mathrm{F}$約110分など)はSPECT核種($^{99\mathrm{m}}\mathrm{Tc}$約6時間,$^{123}\mathrm{I}$約13時間,$^{201}\mathrm{Tl}$約73時間など)に比べ半減期が短い。
正しい。陽電子放出核種(例:$^{18}\mathrm{F}$, $^{11}\mathrm{C}$, $^{15}\mathrm{O}$など)は通常サイクロトロンで製造される(ジェネレータ由来の例もあるが,サイクロトロンの使用は一般的)。
誤り。PET単独の有効線量は一般に標準的なX線CT検査より小さいか同程度である。なおPET/CT検査ではCTによる被曝が加算されるため,トータルの被曝は条件により増える。
解説
ラジオアイソトープを用いる核医学画像は、SPECTはガンマ線放出核種(例: 99mTc、123I)からのガンマ線をガンマカメラで検出し、PETは陽電子放出核種(例: 18F、11C、13N、15O)から放出された陽電子が体内電子と対消滅して生じる2本の511 keVガンマ線を同時計数で検出する。空間分解能は一般にX線CTより低く(CTはサブミリ、PETは数mm、SPECTは数mm〜10 mm程度)、代謝・血流などの機能情報を得ることができる。FDG-PETはグルコース類似体18F-FDGの集積を利用して糖代謝情報を画像化する。PET用核種は半減期が短いものが多く、臨床現場ではサイクロトロンによる供給体制が前提となる。
選択肢別解説
誤り。核医学画像(SPECT/PET)の空間分解能は一般にX線CTより低い。X線CTはサブミリの高分解能が得られるのに対し、PETは数mm、SPECTは数mm〜10 mm程度が目安である。
誤り。SPECTで検出するのは放射性核種からのガンマ線であり、PETで検出しているのも陽電子そのものではなく陽電子と電子の対消滅で生じる2本の511 keVガンマ線である。ベータ線(β線: 電子または陽電子)は体内での飛程が短く、外部検出には適さない。
正しい。FDG-PETではグルコース類似体である18F-FDGが細胞内に取り込まれ、解糖系活性の高い部位(例: 多くの悪性腫瘍)に集積するため、糖代謝情報を画像化できる。
正しい。SPECTは脳血流トレーサ(例: 99mTc-HMPAO、99mTc-ECD、123I-IMP)を用いて脳血流分布を画像化でき、脳血流低下や左右差などの機能評価に用いられる。
正しいと扱う。PETは陽電子放出核種を用い、これらは半減期が短いものが多いためサイクロトロンによる安定供給体制が必要になる。教育的整理では「PET撮影には(院内)サイクロトロンが必要」と説明されることが多い。ただし実務上は18F製剤(半減期約110分)が外部施設のサイクロトロンで製造され配送される運用も広く行われている点には留意する。
解説
核医学画像は体内に投与した放射性医薬品から放出される放射線を体外の検出器で測り、機能分布を断層再構成して得る画像である。SPECTは核種から放出される$\gamma$線を測定し、脳血流などの機能評価に用いられる。PETは陽電子放出核種が体内で電子と対消滅して生じる一対の511 keV $\gamma$線を同時計数し、3次元画像として再構成する。代表例として${}^{18}\text{F}$-FDGを用いたFDG-PETでは糖代謝分布を評価できる。したがって、PETで糖代謝撮像が可能、SPECTで脳血流撮像が可能、PETで3次元画像が得られる、はいずれも正しい。一方、外部照射で画像化するのはX線CTなどであり核医学ではない。測定対象は$\gamma$線であって$\beta$線そのものは直接測定しない。
選択肢別解説
正しい。${}^{18}\text{F}$で標識したフルオロデオキシグルコース(${}^{18}\text{F}$-FDG)を用いるFDG-PETにより、組織の糖代謝分布を画像化できる。腫瘍や炎症で取り込みが高くなる特徴を利用する。
誤り。核医学は体内に投与した放射性核種から放出される放射線を体外で検出して画像化する。体外から放射線を照射して透過像を得るのはX線撮影やCTであり、核医学の方式とは異なる。
誤り。SPECTは核種からの$\gamma$線、PETは陽電子と電子の対消滅で生じる511 keVの$\gamma$線の同時計数を測定対象とする。$\beta$線(電子・陽電子)自体は体内で減弱し外部検出できないため直接は測らない。
正しい。SPECTは脳血流分布の撮像に広く用いられ、${}^{99\text{m}}\text{Tc}$-HMPAOや${}^{99\text{m}}\text{Tc}$-ECDなどの脳血流トレーサを用いて脳の血流量に関する機能画像を得ることができる。
正しい。PETはリング状検出器で同時計数した投影データから断層再構成を行い、3次元画像(3D収集・再構成)を得ることができる。2Dに比べ高感度化が可能である。
解説
核医学検査は、体内に投与した放射性医薬品(RI)から体内で放出される放射線(主に\gamma線)を体外の検出器で捉え、臓器の機能や代謝を画像化する機能画像検査である。PETは陽電子放出核種(例: $^{18}$F)を用い、陽電子と電子の対消滅で生じる511 keVの2本の\gamma線を同時計数して再構成するため、糖代謝の評価($^{18}$F-FDG)や3次元画像の取得が可能である。SPECTはガンマカメラを回転させて全周からデータ収集し、脳血流(例: $^{123}$I-IMP、99mTc-HMPAO、99mTc-ECD など)を含む機能情報を断層再構成する。体外から照射したX線で画像化するCTとは原理が異なる。
選択肢別解説
正しい。PETでは$^{18}$Fで標識したフルオロデオキシグルコース($^{18}$F-FDG)などを用い、ブドウ糖取り込みと代謝の指標を画像化できる。腫瘍など糖代謝が亢進する部位で集積が増加する。
誤り。核医学検査は体内に投与したRIから放出される放射線を体外で検出して画像化する。体外から放射線を照射して画像化するのはX線CTや透視などであり、核医学の原理ではない。
誤り。PETは陽電子($\beta^+$)放出核種を用いるが、検出しているのは陽電子と電子の対消滅で生じる511 keVの\gamma線である。SPECTも\gamma線を検出する。$\beta$線自体は体内で短距離で減弱するため画像化に直接用いない。
正しい。SPECTは回転ガンマカメラで収集したデータから断層再構成し、$^{123}$I-IMPや99mTc-HMPAO/ECDなどを用いて脳血流分布を画像化できる。
正しい。PETはリング状検出器の同時計数データから断層再構成を行い、放射能分布の3次元画像(ボリューム)を得る。現在の装置は3D収集が一般的である。
解説
核医学画像(SPECT・PET)は体内に投与した放射性医薬品から放出される放射線を検出して機能画像を得る。SPECTは放出されたγ線をコリメータ付きガンマカメラで検出して断層再構成するため、X線CT(サブミリ級)に比べ空間分解能は劣るが、心筋血流など機能評価に有用である。PETは陽電子放出核種(例:18F, 11C など)を用い、陽電子と電子の対消滅で生じる2本の511 keVのγ線を同時計数して画像化する。FDG-PETは糖代謝亢進部位に集積する性質を利用し、がん診断に有用である。一方、SPECTは中性子線を検出する装置ではなく、検出対象はγ線であるため、「SPECTは中性子線を検出する」は誤りである。
選択肢別解説
正しい。核医学画像(SPECT・PET)は物理的制約(コリメータや同時計数など)により空間分解能がX線CTより低い。CTはサブミリ級の高分解能に対し、核医学では一般に数mm〜1 cm程度であり、形態描出は苦手だが機能評価に優れる。
正しい。SPECTでは201Tlや99mTc標識製剤(MIBI、Tetrofosminなど)を用いて心筋灌流(血流分布)を評価でき、虚血の有無や範囲の把握に用いられる。
正しい。FDG-PETは18F-FDGが糖代謝の高い病変(多くの悪性腫瘍)に集積する性質を利用し、がんの診断・病期評価・治療効果判定などに有用である。
誤り。SPECTは放射性医薬品から放出されるγ線をシンチレーション検出器とコリメータで検出して画像化する装置であり、中性子線は検出対象ではない。
正しい。PETは陽電子放出核種(例:18F, 11C, 13N, 15O)を用い、陽電子が電子と対消滅して生じる2本の511 keVのγ線を同時計数して画像化する。