74歳の女性。アルツハイマー型老年認知症。約6年前から、朝食の内容を昼には忘れてしまう。最近、貯金通帳の置き場所を忘れ、長女夫婦が盗んだと非難することが多くなり、「他人が勝手に玄関から入ってくる」と訴え入院となった。入院後は落ち着き、作業療法を実施することになった。この患者に作業療法を実施する際の留意点で誤っているのはどれか。
1: 身体機能の評価を行う。
2: 意欲低下がみられる場合は励ます。
3: 言い間違いは指摘する。
4: 単純な作業から始める。
5: 過去に行った作業を適用する。
70歳の女性。7年前にパーキンソン病の診断を受けた。現在、ヤールの重症度分類はステージIII。夫、息子夫婦と同居。発症前は夫とシルバーダンスクラブに所属し活躍していた。生活上の指導で適切でないのはどれか。
1: ベッド柵を取り付ける。
2: トイレに手すりを設置する。
3: 廊下に厚めの絨毯を敷く。
4: 家事の分担を相談する。
5: ダンスに出かける機会を相談する。
50歳の女性。10年前に義母の介護に際して突然の視力障害を訴えたが、眼科的異常はみられなかった。1か月前に夫の単身赴任が決まってから、下肢の冷感、疼痛を主訴として、整形外科、血管外科などを受診するも異常所見は指摘されなかった。次第に食事もとれなくなり、心配した夫が精神科外来を受診させ、本人はしぶしぶ同意して任意入院となった。主治医が、身体以外のことに目を向けるようにと作業療法導入を検討し、作業療法士が病室にいる本人を訪問することになった。本人は着座すると疼痛が増強するからと立位のままベッドの傍らに立ち続けて、他科受診できるよう主治医に伝えてほしいと同じ発言を繰り返す。この患者に対する病室での作業療法士の対応で最も適切なのはどれか。
1: 他科受診できるよう約束する。
2: 夫の単身赴任をどのように感じているか尋ねる。
3: 痛みが軽減することを約束して作業療法への参加を促す。
4: 身体的には問題がなく、心の問題であることを繰り返し伝える。
5: 他のスタッフの発言との食い違いが生じないよう、聞き役に徹する。
80歳の女性。重度の認知症患者。訪問作業療法を実施した際の足の写真を示す。対処方法で正しいのはどれか。
1: 入浴を禁止する。
2: 摂食状況を確認する。
3: 足部装具を装着させる。
4: 足関節の可動域訓練は禁忌である。
5: 踵部にドーナツ型クッションを使用する。
26歳の女性。結婚後に転居したアパートが古く汚れが目立っていた。食事の後片付け、掃除および手洗いをいくらやっても汚れが落ちていないのではないかと不安を感じるようになった。これらに長時間を要するようになり、生活に支障が出始めたため、夫に勧められて精神科を受診した。作業療法での対応として適切なのはどれか。
1: 自由度の高い作業を提供する。
2: 正確さを必要とする作業を提供する。
3: 手洗い行為が始まれば作業を中止させる。
4: 手洗い行為の原因についての自己洞察を促す。
5: 作業工程の確認は作業療法士が本人に代わって行う。
81歳の女性。1人暮らし。1年前からたびたび鍋をこがしたり同じ内容の電話を何回もかけたりすることがあった。娘が自宅を訪ねると、冷蔵庫の中に同じ食材がたくさん詰め込まれており、室内に衣服が散乱していた。本人が生気のない表情で座り込んでいたため来院した。この患者が外来作業療法に通うことになった。この時期の作業療法の目的で優先されるのはどれか。
1: 作業遂行機能
2: 対人関係
3: 知的機能
4: 役割遂行
5: 環境適応
32歳の女性。躁うつ病。18歳で発病。24歳で結婚し、2児をもうけ、スーパーで仕事をしていた。長男が小学校へ入学し、PTAの役員を引き受けた頃から仕事も忙しくなり、気分が高揚し外出や買い物が頻繁となった。心配した夫とともに受診し、入院となった。入院2週目、高揚気分は徐々に治まり、本人から「手芸がしたい」という希望があり、作業療法が開始された。この時点での作業療法として適切なのはどれか。2つ選べ。
1: 現在の病棟での生活の様子を病棟スタッフから聞く。
2: 過剰な刺激を避けるため静かな環境から開始する。
3: 運動を中心としたプログラムを選択する。
4: 手芸用品を持っていき、どのような手芸が好きか本人に確認する。
5: 自宅でどのような役割があるのか本人に確認する。
35歳の女性。現在、6か月児の子育て中であるが、1か月前からテレビも新聞も見る気が起こらないほど周囲への興味と関心が低下し、児と触れ合うこともおっくうになった。物事の判断が鈍くなり、子育てに自信をなくし、自分を責め、ささいなことから不安になりやすくなったため、児を祖母に預けて精神科病院に入院した。入院翌日から不安の軽減を目的に作業療法が開始された。この患者に対する作業療法士の対応で適切なのはどれか。
1: 運動によって体力の増強を図る。
2: 趣味をみつけるよう働きかける。
3: 子育ての情報提供により関心を高める。
4: 集団のレクリエーションで気分転換を図る。
5: ゆとりが持てるような日中の過ごし方を話し合う。
65歳の女性。約1年前から抑うつ気分、意欲低下、判断力低下、不眠、食思不振などがあり、約9か月前に精神科外来を初めて受診した。希死念慮や貧困妄想も加わり、約8か月前に医療保護入院となっている。抗うつ剤投与により不眠、食思不振はある程度改善されたが、悲観的な思考内容は遷延化した。促してかろうじて病棟外への散歩に応じるようになり、数か月が経過したところで、主治医から作業療法の依頼があった。この時点での作業療法として適切でないのはどれか。
1: 本人の自己決定を見守る。
2: 個別のかかわりから開始する。
3: 1回の活動時間は短く設定する。
4: 長期間をかけて完成する課題を採用する。
5: なじみのある課題より初めての課題を採用する。
63歳の女性。脳血管性認知症。55歳の頃、一過性脳虚血発作で倒れたことがある。最近、そのような事実はないのに、「息子たちが無断で家の売却の話を進めた」と被害的になり、興奮状態となった。また、日中から雨戸を閉めきり、「家中に虫がいる」と言うようになり入院した。入院後は、問題行動も消失し、作業療法の導入が計画された。作業療法開始時の留意点として適切でないのはどれか。
1: 一過性脳虚血発作の兆候に注意する。
2: 指示の理解能力を評価する。
3: 被害的な話の真偽を確かめる。
4: 家での生活リズムについて聞く。
5: せん妄の有無を確かめる。
85歳の女性。多発性脳梗塞。2年前大腿骨転子間骨折。T字杖歩行をしていたが、最近、転倒がみられるようになった。また、痴呆が出現し声かけをしないと歩行をしなくなり、ベッドに臥床することが多くなった。介護者である嫁の要請があり訪問による理学療法を開始した。理学療法および指導で適切でないのはどれか。
1: 大腿四頭筋の等尺性筋力強化訓練
2: 介助歩行とその指導
3: 廊下に手すりを設置
4: ポータブルトイレへの移乗訓練
5: 屋外用車椅子の貸与
80代の女性。息子の家族と同居。孫の名前を忘れる、日付がわからない、居眠りする、洗濯や掃除を完了せず放置するなどのエピソードが頻繁にあり受診したところ、Alzheimer型認知症と診断され作業療法の指示が出た。介入で適切なのはどれか。
1: 家事はできるだけ減らすよう指導する。
2: 家事を複数同時に行わないよう指導する。
3: 休憩を今まで以上に多く取るよう指導する。
4: 「今日は何月何日ですか」と家族に尋ねさせる。
5: 「お孫さんの名前はなんでしたか」と毎回聞く。
40歳の男性。4月に職場の配属先が変わり新しい仕事に慣れない日が続いていた。会社に行くと手に冷や汗が出て、胸がどきどきするようになった。1か月前から不眠、意欲の低下が出現した。会社に行く気力がなくなり、朝からふさぎこむようになったため、妻と一緒に精神科を受診し、入院となった。この患者の入院初期の治療として適切でないのはどれか。
1: 対人技能訓練を行う。
2: 隠れた身体疾患を検索する。
3: 睡眠薬を処方する。
4: 抗うつ薬を処方する。
5: 充分な休息を与える。
65歳の女性。アルツハイマー型認知症。2年前から物忘れがひどくなった。散歩に行って自宅に帰れなくなってから、抑うつ的となり自宅から出たがらなくなった。日中の臥床傾向が強く、夜中に徘徊するようになったため入院となった。昼夜逆転はなくなり介助で食事がとれるようになり、退院することになった。退院後の支援で適切でないのはどれか。
1: 通所介護(デイサービス)の利用
2: 訪問看護の利用
3: 介護老人保健施設への入所
4: 訪問介護(ホームヘルプサービス)の利用
5: 福祉ホームへの入所
62歳の女性。多発性硬化症。発症から3年経過。寛解と再燃とを繰り返している。四肢筋力は軽度低下し、表在・深部感覚ともに鈍麻している。最近、疲労の訴えが多い。作業療法で適切なのはどれか。
48歳の男性。市役所に勤務。住民の苦情に対応する業務に就いたころから、不眠、食欲不振、意欲低下および思考抑制が始まった。3か月間の休職を取り自宅療養をしていたが「自分は役に立たない」と言い、希死念慮を認めたため入院となり、2週後から作業療法が開始された作業療法導入時の留意点はどれか。
1: 得意であった作業を導入する。
2: 他者との交流を促す。
3: 休息の取り方を練習する。
4: 病気の体験を言語化する。
5: 自己決定の機会を増やす。
86歳の女性。脳梗塞による左片麻痺、発症後1年半が経過した。ADLは介助すればおかゆなどの調理食を食べる以外は全介助、ドーナツ型の枕を使用してベッド上で臥床している。全身の筋萎縮、筋短縮と関節拘縮を著明に認める。退院時に介護保険を利用してベッドやマットを準備したが、体圧分散マットのような特殊マットは利用していない。作業療法士が自宅訪問したときのベッド上での肢位を示す。褥瘡予防と姿勢保持のために背臥位でポジショニングを行う。クッションを置く部位で正しいのはどれか。
1: 後頸部
2: 肩甲骨背面
3: 腰背部
4: 右大転子部
5: 両大腿内側
60歳の男性。統合失調症。21歳時に発症し、過去に5回の入院歴があった。35歳時に被害妄想が再燃し、6回目の入院となって以来、父親との折り合いが悪く退院先が決まらないまま25年間入院していた。父親が亡くなったことを契機に、一人暮らしとなった84歳の母親と本人の希望により、自宅退院に向けた支援を行うことになった。この時期の作業療法の目的で適切でないのはどれか。
1: 服薬管理
2: 金銭管理
3: 外出体験
4: 対人関係の改善
5: 自宅での役割の検討
76歳の男性。誰もいないのに「自分の布団に知らない子どもが寝ている」と訴え、妻に連れられて受診した。妻の話では、数年前から些細な物忘れが増え、日中ぼう然としていることも多いという。歩行中に転倒することも増えてきているという。作業療法室でみられるこの患者の特徴はどれか。
1: 些細なことで泣き出す。
2: 他人の物を勝手に持っていこうとする。
3: 時間どおりに来室し必ず同じ席に座る。
4: わからない質問に対し言い繕って答える。
5: 日によって意識レベルの低下度合いが異なる。
48歳の男性。妻と二人暮らし。昇進後しばらくして、不眠・食欲不振等の体調不良を訴え始めた。些細な事を気にして「考えがまとまらない。楽しいと感じることがない」などと言ってふさぎ込むようになった。近くの精神科病院を受診し、うつ病と診断され入院となった。入院後1か月で睡眠が取れるようになったが、抑うつ気分は続いている。この時点で作業療法が開始された。作業療法開始時の目的で適切なのはどれか。2つ選べ。
1: 病状認識の促し
2: 病前生活への復帰
3: 生活リズムの回復
4: 社会的役割の提供
5: 不安の軽減