臨床工学技士問題表示
臨床工学技士国家試験
解説
TDM(治療薬物モニタリング)は、血中濃度が臨床効果や副作用と密接に関係し、かつ安全域(治療域と中毒域の間隔)が狭い薬物で特に重要となる。また、薬物動態の個人差が大きい場合や腎機能障害などで排泄が変化する場合は、同じ用量でも血中濃度が大きく変わるため、測定に基づく用量調整が必要になる。一方で、治療域と中毒域が大きく離れている(安全域が広い)薬物では、血中濃度が多少変動しても有害事象のリスクが低く、TDMの必要性は相対的に低い。
選択肢別解説
有効血中濃度範囲が狭い(安全域が狭い)薬物は、わずかな濃度上昇で中毒、低下で無効になりやすい。したがって血中濃度の把握と用量調整が重要で、TDMの必要性は高い。必要性が低いとはいえない。
体内動態(吸収・分布・代謝・排泄)に個人差が大きいと、同用量でも血中濃度と効果・副作用が大きくぶれる。予測性を補うためにTDMが有用であり、必要性は高い。必要性が低い条件ではない。
治療域と中毒域が大きく離れている(安全域が広い)薬物では、濃度の変動が直ちに中毒に結びつきにくい。臨床症状の観察のみで安全に投与できる可能性が高く、TDMの必要性は相対的に低いため、本問の該当選択肢である。
薬効や副作用が血中濃度とよく相関する場合、濃度測定により効果予測と安全性評価がしやすくなるため、TDMの意義は高い。必要性が低いとは判断できない。
腎障害では腎排泄性薬物のクリアランスが低下し、半減期が延長して血中濃度が上がりやすい。個別の腎機能に合わせた用量調整が必要で、TDMの必要性は高い。
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解説
正答は「血漿蛋白と結合したものは薬理作用をもたない」。薬物は血中で結合型(アルブミンなどの血漿タンパクと結合)と遊離型に分かれ、受容体に結合して作用するのは遊離型である。治療係数は安全域の指標で、$\frac{LD_{50}}{ED_{50}}$ が大きいほど安全性は高い。坐薬(直腸投与)は直腸下部からの吸収では門脈を経ず全身循環に入るため初回通過効果を回避できる(一般的な試験解釈)。薬効持続は一般に内服が筋注より長い傾向にある。抗てんかん薬は治療域が狭く個体差も大きいため代表的なTDM対象薬である。
選択肢別解説
誤り。治療係数は $\frac{LD_{50}}{ED_{50}}$(半数致死量/半数有効量)で表され、この比が大きいほど有効量に対して致死量が十分に大きい=安全域が広いことを意味し、安全性は高い。
正しい。血中薬物は血漿タンパク結合型と遊離型に分かれ、受容体結合・組織移行・代謝・排泄に直接関与して薬理作用を示すのは遊離型である。結合型は貯蔵部位として機能し、平衡により徐々に遊離型を補うが、結合している時点では作用を示さない。
誤り。直腸投与(坐薬)は直腸下部からの吸収分が門脈を介さず体循環に入るため、肝初回通過効果を受けにくい。上部直腸からの吸収は一部門脈に入るが、一般に坐薬は初回通過効果回避手段として用いられる。
誤り。一般に内服は吸収が緩徐で作用発現は遅いが持続は長めで、筋肉内注射は内服より速やかに作用が現れ持続は相対的に短い傾向がある(内服>皮下注>筋注>吸入>静注の順に持続が短くなるのが典型)。
誤り。抗てんかん薬(例:フェニトイン、カルバマゼピン、バルプロ酸、フェノバルビタールなど)は治療域が狭く個体差や相互作用の影響が大きいため、治療薬物モニタリング(TDM)の代表的対象である。
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解説
本問は薬物動態・薬力学の基本理解を問う。薬物代謝は年齢により酵素活性や臓器機能が変化するため速度が異なる(新生児では未熟、高齢者では低下傾向)。静脈注射は薬剤を直ちに血中へ送るため内服より発現が速い。徐放製剤は作用持続と血中濃度の安定化を目的としており速効性重視ではない。同一抗菌薬を連用すると選択圧により耐性菌が出現しやすい。薬理作用は薬剤側(用量・剤形・投与経路・相互作用など)と生体側(吸収・分布・代謝・排泄、年齢、臓器機能、遺伝的多型、疾患状態など)の双方の要因に左右される。以上より、1・4・5が正しく、2・3は誤りである。
選択肢別解説
正しい。薬物代謝は主に肝の薬物代謝酵素活性や肝腎機能に依存し、年齢により大きく変動する。新生児・乳児では酵素活性が未熟、高齢者では肝血流量や腎機能低下によりクリアランスが低下しやすく、投与設計の調整が必要となる。
誤り。静脈注射は薬剤を直接血中に投与するため、吸収過程や初回通過効果を経る内服よりも薬効発現は速い(多くの場合ほぼ即時)。
誤り。徐放剤(持続性製剤)は有効成分の放出を遅らせて作用を持続させ、血中濃度の急峻な上昇を抑えつつ安定化することを目的とする。速効性重視の設計ではない。
正しい。同一抗菌薬の連用・不適切使用は細菌に選択圧をかけ、酵素産生や排出ポンプ増強、標的変異などの機序で耐性菌の出現を招きやすい。抗菌薬適正使用(スチュワードシップ)が重要である。
正しい。薬理作用は薬側要因(用量、剤形、投与経路、相互作用、溶解性など)と生体側要因(ADME、年齢、体重、肝腎機能、遺伝的多型、疾患状態)双方の影響を受ける。
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解説
生物学的半減期は、血中薬物濃度が半分になるまでの時間で、消失速度を表す指標である。半減期はクリアランス(CL)と分布容積(Vd)により $t_{1/2}=\frac{\ln 2\cdot V_d}{CL}$ と表され、主に消失臓器(肝での代謝、腎での排泄)の機能低下によりCLが低下すると延長する。したがって、肝代謝能力の低下と腎排泄能力の低下は半減期を延長させる。一方、吸収能力や投与量の変化、組織への移行“速度”の変化は、濃度の立ち上がりやピーク値などには影響しても、通常、消失過程の半減期そのものは変化させない。
選択肢別解説
消化管からの吸収能力の低下は、生体利用率(F)や到達速度が低下しCmaxやAUCが低下するが、消失過程を規定するCLやVdを直接は変えないため、半減期$t_{1/2}$は通常延長しない。
血液から各組織への“移行速度”低下は、初期の分布相(濃度の立ち上がりや二相性の早い相)に影響し得るが、消失クリアランス(CL)を低下させるわけではないため、消失半減期の延長にはつながらない。
肝臓の代謝能力が低下すると肝クリアランスが低下し、式 $t_{1/2}=\frac{\ln 2\cdot V_d}{CL}$ において分母のCLが小さくなるため半減期は延長する。肝代謝型薬物で典型的にみられる。
腎臓の排泄能力(糸球体濾過、尿細管分泌・再吸収を含む)が低下すると腎クリアランスが低下し、全身CLが下がる。その結果、$t_{1/2}=\frac{\ln 2\cdot V_d}{CL}$ により半減期は延長する。腎排泄型薬物で顕著。
総投与量の減少は血中濃度の高さ(Cmax、AUC)を下げるが、消失速度を規定するCLやVdを直接は変えないため、半減期自体は変化しない。
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解説
薬物の生物学的半減期は、消失速度定数やクリアランスに依存する。数式では $T_{1/2}=\frac{0.693}{k_{el}}=\frac{0.693\times V_d}{CL}$ と表せ、半減期は主にクリアランス(CL)低下や分布容積($V_d$)増加で延長する。肝臓代謝や腎排泄はクリアランスの主要成分であり、これらの機能低下は消失が遅れ半減期を延長する。一方、吸収速度や分布“速度”の変化、投与量の多寡は、通常の一次速度消失下では消失定数やCLを変えないため半減期を延長しない。
選択肢別解説
消化管からの吸収能力低下は血中到達量や到達速度(Cmax低下・Tmax遅延)に影響するが、消失速度定数 $k_{el}$ やクリアランス(CL)を直接変えないため、通常の一次速度消失では半減期は延長しない。
血液から組織への移行“速度”の低下は分布相の速度に関する変化であり、平衡到達までの時間は延び得るが、CLや平衡後の $V_d$ を直接低下させるとは限らない。したがって消失速度定数 $k_{el}$ は通常不変で、半減期は延長しない。
肝臓の代謝能力低下は代謝クリアランスを低下させ、全身クリアランス(CL)を減少させる。式 $T_{1/2}=\frac{0.693\times V_d}{CL}$ より、CL低下は $T_{1/2}$ の延長を招くため、半減期は延長する。
腎臓の排泄能力低下は腎クリアランスを低下させ、全身クリアランス(CL)を減少させる。$T_{1/2}=\frac{0.693\times V_d}{CL}$ より、CL低下により半減期は延長する。
総投与量は血中濃度レベル(CmaxやAUC)に影響するが、一次速度消失の範囲では消失速度定数 $k_{el}$ やCLを変えず、半減期は用量非依存であるため延長しない。
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解説
薬物治療に影響する因子は大きく生体側因子(年齢、体格[体重・体表面積]、臓器機能、遺伝的素因、疾患状態など)と薬物側因子(投与経路、用量、剤形、併用薬による相互作用など)に分けられる。投与経路はバイオアベイラビリティや作用発現時間に直結し、体重は分布容積や用量設定(mg/kg など)に影響する。併用薬は酵素誘導・阻害や輸送体競合などで相互作用を起こし、年齢は代謝・排泄機能の差を通じて薬力学・薬物動態を変える。一方、ABO式血液型は主として輸血・移植で重要となる赤血球抗原の分類であり、通常の薬物療法における用量設定や反応性の判断に用いられる要素ではないため、薬剤治療に影響を与える因子としては考えにくい。
選択肢別解説
投与経路は吸収の有無と程度、初回通過効果、作用発現の速さに影響し、薬効に大きく関与する。経口・静注・筋注・貼付剤などで有効性や必要用量が変わり得る。従って影響を与える因子である。
ABO式血液型は赤血球表面抗原の違いによる分類で、主に輸血や臓器移植での適合判定に関係する。一般的な薬物療法の反応性・用量設定を左右する指標としては用いられず、薬効に与える影響は通常想定しないため、本設問で最も考えにくい因子である。
体重は体格の代表指標で、分布容積やクリアランス推定に関与し、用量設定(mg/kg、体表面積換算)に直結する。薬効・安全性に影響するため重要な因子である。
併用薬は酵素誘導・阻害、輸送体競合、薬力学的相互作用(相加・相乗・拮抗)を通じて血中濃度や作用を変える。したがって薬剤治療に強く影響する因子である。
年齢は肝腎機能や蛋白結合、受容体感受性などの加齢変化や未成熟性により薬物動態・薬力学を変化させる。小児・高齢者では特に用量調整が必要で、影響する因子である。
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解説
高齢者では薬物動態・薬力学の加齢変化により、副作用が出やすく用量調整が必要となる。代表的な変化は、肝血流や肝の酸化的代謝(Phase I)の低下、腎機能低下、体内総水分量の減少、体脂肪率の増加、血漿アルブミン低下などである。これにより、水溶性薬物は分布容積が小さくなり同一用量で血中濃度が上がりやすく、脂溶性薬物は脂肪組織への分布が増え半減期が延長する傾向となる。また自律神経反射の低下や多剤併用の影響で薬物誘発性低血圧が起こりやすく、中枢神経系薬物(ベンゾジアゼピン系など)への感受性も高い。したがって「脂溶性薬物の半減期が短縮する」は誤りであり、実際は延長しやすい。
選択肢別解説
正しい。高齢者は加齢に伴う自律神経反射(特に圧受容体反射)の低下や脱水傾向、降圧薬・利尿薬などの多剤併用により、体位変換時を含め薬物誘発性低血圧が生じやすい。
正しい。加齢で肝血流量の低下や肝の酸化的代謝(CYPに関わるPhase I)が低下しやすく、肝クリアランスが下がる薬物では代謝が遅くなる。結果として作用が遷延・増強しやすい。
誤り。高齢者では体脂肪率が増えるため脂溶性薬物の分布容積が増大し、一般に半減期は延長する(t1/2はおおむね分布容積に比例)。したがって「短縮する」は不適切。
正しい。加齢により総体水分量が減少し水溶性薬物の分布容積が小さくなるため、同一用量投与で血中濃度が上昇しやすい。腎機能低下も相まって曝露が増える場合がある。
正しい。高齢者は中枢神経系への薬理学的感受性が亢進し、さらにアルブミン低下で遊離型分率が増える薬剤では作用が強まりやすい。ベンゾジアゼピン系では鎮静・ふらつき・転倒リスクが増えるため少量からの投与が推奨される。
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