電気工学1
直流回路の問題で必ず必要となる知識はオームの法則です。逆にこれさえ理解できれば直流回路の問題は1つの得点源になります。
オームの法則
オームの法則はたった3つ要素で表現された公式です。公式自体は簡単ですが国家試験レベルの問題を解くには、少し深く理解する必要があります。
要素[単位]
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電圧V[V] 水路で例えると・・・高さ
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電流I[A] 水路で例えると・・・水の量 流れる方向は高さが低い方へ(同じ高さなら流れない)
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抵抗R[Ω] 水路で例えると・・・水路の細さ(細いほど、抵抗が大きくなる)
公式
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抵抗R[Ω]が大きいほど・・・高さが必要のため電圧Vが分子にあり、流れる水の量が少ないため電流Iは分母にあります。
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電流I[A]が大きいほど・・・高さが必要のため電圧Vが分子にあり、水路が太いため抵抗Rは分母にあります。
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電圧V[V]が大きいほど・・・流れる水の量が多くなるため電流Iは比例し、水路が長くなるため抵抗Rも比例します。
合成抵抗・分圧の法則・分流の法則
合成抵抗
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並列
$$\frac{1}{R_0} = \frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_2} + \frac{1}{R_3} + \cdots + \frac{1}{R_n}$$
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直列
$$R_0 = R_1 + R_2 + R_3 + \cdots + R_n$$
上の図の場合、並列の部分の合成抵抗を先に求めて足す
分圧の法則
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並列
同じ高さから同じ高さへ落ちているため同じ
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直列
抵抗の比と同じ比に電圧が分圧される(比例)
上の図の場合、EがV1とV3に分圧される。V1とV2は並列のため同じ。
E=V1+V3=V2+V3
V1:V3=V2:V3=R1とR2の合成抵抗:R3
分流の法則
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並列
抵抗が少ない方へより多くの水が流れる。抵抗の比と逆の比に電流が分流される(反比例)
上の図の場合、R1:R2=I2:I1
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直列・・・1本道のため同じ
倍率器・分流器
倍率器は、電圧計に直列で接続し電圧計にかかる電圧を低下させる抵抗器のことです。つまり「分圧させる」→「直列に接続する」ということです。
分圧のことについて理解しとけば公式を覚えてなくても解くことが出来ます。
倍率器
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最大目盛り$V_v$が1V、内部抵抗rが1Ωの電圧計で100Vまで測りたい。倍率m=100
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倍率器で99Vを負担してほしい。
※倍率器が負担する電圧$V_m$ = 電圧計の最大目盛り$V_v$ × 倍率m - 電圧計の最大目盛り$V_v$ ー①
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抵抗の比と電圧の比は同じであるため
倍率器$R_m$:内部抵抗r = 倍率器が負担する電圧$V_m$:電圧計の最大目盛り$V_v$ ー②
$R_m$:1 = 99:1
$R_m$ = 99Ω
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公式
$R_m$ : r = $V_v$m - $V_v$ : $V_v$ ー②に①を代入
$R_m$$V_v$ = $V_v$mr - $V_v$r
$R_m$ = mr - r
$R_m$ = (m - 1)r
分流器は、電流計に並列で接続し電流計に流れる電流を低下させる抵抗器のことです。つまり「分流させる」→「並列に接続する」ということです。
分流器
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最大目盛り$I_I$が1A、内部抵抗rが1Ωの電流計で100Aまで測りたい。倍率m=100
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分流器側に99Aを流れてほしい。
※分流器側に流れる電流$I_m$ = 電流計の最大目盛り$I_I$ × 倍率m - 電流計の最大目盛り$I_I$ ー①
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抵抗の比と電流の比は逆であるため
分流器$R_m$:内部抵抗r = 電流計の最大目盛り$I_I$:分流器側に流れる電流$I_m$ ー②
$R_m$:1 = 1:99
$R_m$ = 0.0101Ω
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公式
$R_m$ : r = $I_I$ : $I_I$m - $I_I$ ー②に①を代入
$R_m$$I_I$m - $R_m$$I_I$ = $I_I$r
$R_m$m - $R_m$ = r
$R_m$(m - 1) = r
$R_{m}=\dfrac {r}{m-1}$
オームの法則を使う際の注意点
オームの法則の要素はRVIの3つですが、回路のどのRVIを使えばいいかをしっかり理解しましょう。
ポイント
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抵抗を求める場合(R=V/I)
その抵抗(合成抵抗)の電位差(電圧降下)とその抵抗に流れている電流を使用する。
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電圧を求める場合
その電位差に挟まれている抵抗(合成抵抗)とその抵抗に流れる電流を使用する。
図のEは回路の合成抵抗Rと電流Iで求めることができる。
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電流を求める場合
その電流が流れている抵抗(合成抵抗)とその抵抗の電圧降下を使用する。
図のIは「V3/R3」や「E/回路の合成抵抗」で求めることができる。
キルヒホッフの法則
キルヒホッフの第1法則
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回路の分岐点に流れ込む電流と流れ出る電流の和は等しい
上の図は$I_1+I_2=I_3+I_4$と表現することができます。
電流の方向が分からない場合は自分で仮定して式を立てればいいです。もし間違っていても計算の結果、負の値としてでるので問題ないです。
現実と矛盾がありますが、すべて分岐点に向かって流れる仮定、又はすべて出る方向に流れる仮定でも問題ないです。
この場合$I_1+I_2+I_3+I_4=0$という式が立てれます。計算結果は1つ以上の項が負の値になり、矛盾が無くなります。
キルヒホッフの第2法則
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電気回路の任意の一回りの閉じた経路(つまり円)について、電源電圧と電圧降下は等しい
電源電圧で作られた高さは、通り道にある抵抗による電圧降下によってすべて消費される。ということです。
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初めに各抵抗に流れる電流の向きが分からない場合は、向きを仮定して書き込みましょう。図では上の様にしました。
※この電流の向きは連立方程式を解くうえで固定しなければなりません。(式ごとに向きを変えない)
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電気回路の一回りの閉じた経路について考えていきましょう。図の回路には3つの円が作れますが、その内2つについて考えていきましょう。それぞれの円の回転方向(電流の方向)は自由に決めて大丈夫です。
円1、円2ともに一つの電源電圧と2つの抵抗があります。それぞれ、キルヒホッフの第2法則から式が立てれます。
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円1では $E_1=I_1R_1 + I_2R_2$
円2では $-E_3=I_3R_3 + I_2R_2$
左辺が電源電圧。右辺が通り道で発生した電圧降下の和です。(V=IR)
練習問題